将来計画を作成し投資やM&Aの価値を測定する手法として、現代のファイナンス理論では「割り引く」という考え方があります。なぜ割り引くのかというと「将来の1億円は今の1億円より価値が少ない。」との前提があるからです。この前提はどういった根拠からきているのでしょうか。例えば現在は微々たるものですが現在1億円持って銀行に預ければ何がしか利子がつきます。この利子分は多くないと将来の1億円が同じ価値とは言えませんね。さらにファイナンス理論では将来の不確実性(これを「リスク」といいます)の存在により、合理的行動をとる経済人としては不確実性を踏まえて将来の1億円は今の1億円より値打ちが低いと見るわけです。こうした考え方を用いて「割り引く」時には割引率r、年数nとして将来価値÷(1+r)ⁿを計算したものを現在価値と言います。
前置きが長くなりましたが、こうした考え方はバブル崩壊後の事業環境が激変する中で、経営者が投資に対する考え方を変化させ、リスクに見合ったリターンを得ようとリスク管理を強化する中で企業経営に積極的に持ち込まれました。それまでの考え方は「割り引く」という考え方ではなく、将来の1億円も現在の1億円も同じ価値で測定した、いわゆる回収期間法(何年で投資を回収できるか)を唯一の投資尺度としていました。それでは「割り引く」ことによりどのように投資に対するマインドが変わってきたのか次回ご説明しましょう。