こうして利益の出ない事業は残しておくべきでないこととなり、日本企業は我先に「割り引き」を含めた業績指標を経営にビルトインさせていきました。1989年12月に株価暴落が始まって10年ほどが経ち、ちょうどコンピュータの2000年問題(メモリを節約するため年度を下二桁(99年、01年など)だけ使用して組まれたソフトウエアが年数計算を誤る可能性があるという問題)が社会問題となっていたころ、各企業がこぞって事業の「選択と集中」のための指標導入を行いました。
さて、それから10年以上たちこうした指標を導入した会社ではどんなことが起こっているかご存知でしょうか。少ない投資で早く回収でき、しかも投資は出来るだけ後倒しできないか・・・が事業投資マインドを冷えさせてしまったのです。事業部長にとっては投資して回収が遅れれば評価が下がります。投資とはある程度リスクを取って将来の成長に準備することであり、すべての投資がうまくいくとは限りません。したがって経営者の考え方一つでその部下である事業責任者は投資に対する意識が変わってきます。「選択と集中」の世の中で日系企業が投資をしぼめてしまった結果、革新的な分野、例えばスマホなどの電子機器やその部品、グーグルなどのソフトウエアやインターネットビジネスの分野で日本企業は大きく後れをとることとなり関連する各種の分野に影響しています。製造業においても中国などの新興国で最新鋭の機械を導入して生産性と品質を向上させた結果、日本国内での生産は縮小の一途をたどっています。こうしたことにより経常収支は物品の輸出入の収支である「貿易収支」で赤字基調が定着し、特許や利払い等の「サービス収支」で何とかプラスを維持しており過去の遺産で食いつないでいる状況になっています。こうした傾向はいつまで続くのでしょうか。