今までお話ししてきたことを裏付けるように、最近ある上場会社の社長とお話をしていて「当社は2000年頃から画期的な新製品が出ていない」というコメントをいただきました。まさに資産効率の追求は事業責任者の投資マインドのみならず新事業、新製品へのチャレンジ精神をも奪い去っていたのかもしれません。その会社では今年をターニングポイントとするべく社会にインパクトを与える新製品を送り出すことを明言しておられます。次なる問題は、こうした新事業へのチャレンジ精神の発揚と、既存事業の効率化の推進をいかに両立させていくかにあります。すなわち利益を稼がねばならない既存事業においては従来のように投資効率やキャッシュフローの最大化を目指し、新規事業においては向こう傷をいとわず新たな市場にチャレンジする・・・こうした二通りのマインドセットをうまく使いこなしていかねばなりません。私も勤務していた国際的な会計士事務所において監査部門から新しくできたコンサルティング部門へ異動した際、従来の部門はいわゆる「農耕民族」、すなわち顧客基盤が既にある事業であり、コンサルティング事業、いわゆる「狩猟民族」、すなわち常に仕事を獲得していかねばならならい事業との格差に戸惑ったことがあります。いったん農耕民族として何年も仕事をすると、仕事があることが当たりまえと思うようになり敢えて苦労することが見える新規顧客を獲得する必要性は微塵も感じておりませんでした。
これから新規事業にチャレンジしていく企業は中の従業員のマインドセットを変える、または「狩猟民族」のDNAを持つ従業員を掘り起こし、継続してモチベートしていく必要があります。